第9回 子どもの“その日そのとき”の背景に目を向けてみよう〜見えない疲れや心の揺れを理解する視点〜

はじめに
試合や練習中、「今日はなんだか集中していないな」「やる気がなさそうだな」と感じたことはありませんか?
そんなとき、つい「もっと頑張って!」「やる気ないの?」と声をかけたくなるものですが、
その前に、その日の子どもの“背景”に目を向ける視点がとても大切です。
子どもの行動は、その日一日の出来事や心の状態、体調など、さまざまな要因に影響されています。
今回は、「今日のプレーの奥に何があるのか?」を考えるためのヒントをお届けします。
プレーの裏にある“見えない事情”
子どもは大人以上に、気持ちや体調に影響を受けやすい存在です。
たとえば…
- 学校で友達とケンカした
- テストでうまくいかなかった
- 昨晩よく眠れなかった
- お腹が少し痛い
- 自信をなくすような出来事があった
こうしたことは、プレーの質や集中力、姿勢に大きく影響します。
でも、大人はどうしても「目に見える行動」だけで評価してしまいがちです。
今日のプレーの裏に、どんな子どもの背景があるのか?
その視点を持てるだけで、声かけや接し方が変わります。
「頑張れ」の前に「どうした?」を
調子が悪そうなとき、頭ごなしに「ちゃんとやりなさい!」ではなく、
まずは「今日はなにかあった?」と聞いてみてください。
子どもがすぐに話してくれなくても大丈夫です。
大切なのは、「見てもらえている」「気にかけてもらっている」と感じること。
それだけで、子どもは少しずつ心を開き、信頼関係が深まっていきます。
安心感は、プレーの質にもつながります。
調子が悪い=悪いことではない
私たち大人も、「今日は調子が出ないな」「なんだか気が乗らないな」という日があります。
子どもも同じです。常に100%で頑張れるわけではありません。
でも、子どもに対しては「頑張らせなければ」「やらせなければ」という気持ちが強くなってしまうことがあります。
そこで一歩引いて、
- 「今日はそういう日なんだな」
- 「じゃあ、今日は“できる範囲”でいいか」
- 「無理にやらせなくても、次につなげればいい」
と考えられると、子どもは必要以上に責められることなく、自分のペースで立ち直っていけます。
“まるごとの子ども”を見るまなざしを
私たちは、サッカーをしている子どもだけを見てしまいがちです。
でも、子どもはサッカーだけで生きているわけではありません。
「学校のこと」「友だちとのこと」「家庭のこと」「自分の体調や気持ち」…
いろんなものを背負いながら、グラウンドに立っています。
だからこそ、その日その時の“まるごとの子ども”に目を向けてみてください。
- 「今日は顔色が少し違うな」
- 「ちょっと声が小さいな」
- 「なんとなく元気がないな」
そんな小さな変化に気づくことが、子どものサポーターとしての大きな一歩になります。
まとめ
「今日の子ども」は、昨日とも、明日とも違う存在です。
その日の子どもの背景を想像する力が、大人の関わりを変え、
子どもが安心してプレーし、自信を回復する手助けになります。
プレーの“結果”ではなく、子どもそのものを見る目線を。
そのまなざしが、子どもにとっての「本当の支え」になります。
▶次回予告
【第10回】
大人が変われば、子どもはもっと伸びる
〜環境が子どもの才能を引き出す〜
いよいよ最終回。子どもに本当に必要な環境とは何か、大人ができる“変化”について一緒に考えていきましょう。