第6回 「勝ちたい!」は自然な気持ち。でも、そこにある落とし穴とは?〜子どもの「勝ちたい」を、成長につなげる大人の関わり方〜

はじめに
試合が近づくと、「勝ちたい!」「絶対に点を取りたい!」と目を輝かせる子どもたち。
その姿に、私たち大人も胸が熱くなりますよね。
子どもが「勝ちたい」と思うのは、ごく自然で健全なこと。
しかし、その「勝ちたい」が過度なプレッシャーに変わると、かえって成長の妨げになることもあります。
今回は、子どもの「勝ちたい」という気持ちを、どう育み、どう支えるか。
そのバランスについて考えていきましょう。
「勝ちたい」は、成長エネルギーの源
子どもは、勝つことで認められたい、嬉しい思いをしたいという気持ちから頑張ります。
この「勝ちたい!」という気持ちは、努力を後押しし、向上心を引き出す力になります。
- 試合に出たいから練習をがんばる
- 上手くなってチームに貢献したい
- ゴールを決めて、みんなと喜びたい
こうした前向きなモチベーションは、子どもの「成長の燃料」になります。
「勝ちたい」がプレッシャーに変わると…
ところが、大人の関わり方によっては、その「勝ちたい」がプレッシャーに変わってしまうことがあります。
たとえば、
- 「なんで勝てなかったの?」
- 「絶対勝たなきゃダメだよ」
- 「前より下手になってない?」
こうした言葉は、無意識に「結果で評価されている」という印象を与えます。
すると、子どもはミスを恐れたり、自信をなくしたり、「勝てなかったら怒られる」と思い込んでしまいます。
それでは、「勝ちたい」が「勝たなきゃ」に変わり、サッカーが楽しくなくなってしまうのです。
「勝ちたい」と「楽しさ」を両立させる声かけ
では、子どもの「勝ちたい!」という気持ちを活かしつつ、プレッシャーにさせないためにはどうすればいいでしょうか。
たとえば、こんな声かけを意識してみてください。
- 「今日はどんなふうに勝ちたいって思ってたの?」
- 「勝つために工夫してたところ、見てたよ」
- 「勝てなかったけど、チャレンジはすごく良かったね」
- 「楽しかった?またやりたいって思えた?」
「勝ちたい気持ち」を否定せず、そのプロセスや姿勢に目を向けることで、子どもは「挑戦していいんだ」「結果だけじゃないんだ」と安心できます。
大人が「勝ち」にこだわりすぎると…
子どもよりも、大人が勝敗に一喜一憂してしまうと、チーム全体の空気が変わります。
- ミスを責めるような雰囲気
- 試合に出られなかった子の居心地の悪さ
- 目先の勝利を優先した偏った采配
これでは、子どもたちは「勝つために役立つ子」しか価値がないと思い込み、プレッシャーや不安が大きくなってしまいます。
勝っても負けても、「その中身」を共有しよう
試合後、大人が最初に話す内容で、子どもの受け取り方は変わります。
- 「今日はみんなで声をかけ合ってたね、すごくよかった」
- 「あのシーン、チャレンジしてたのが伝わってきた」
- 「前の試合より、ボールを奪いに行く回数が増えてたね」
このように、「勝ち負け」よりも「中身」に焦点を当てると、子どもたちは自分たちの頑張りを前向きにとらえることができます。
まとめ
「勝ちたい」という気持ちは、子どもがサッカーに夢中になるための大切な感情です。
でも、それを大人が「勝たなきゃいけない」という義務に変えてしまうと、子どもたちはサッカーを楽しめなくなってしまいます。
私たち大人にできるのは、勝敗に関わらず、チャレンジする姿勢、仲間と関わる姿、成長しようとする心に目を向けること。
そうすれば、子どもたちは「勝ちたい」を前向きな原動力に変えて、ぐんぐん伸びていきます。
▶次回予告
【第7回】勝ち負けで一喜一憂する親の姿に、子どもは何を感じている?
子どもの“心の中”をのぞいてみる回です。
ぜひ次回もご覧ください。